大腸がん久須美貴哉 恵佑会札幌病院副院長・外科主任部長

久須美貴哉 恵佑会札幌病院副院長・外科主任部長

 

どんな病気?

食物は口から入り、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門を通って排泄されます。これらの器官を総称して消化管と呼びますが、大腸がんは、その最後にあたる約1.5〜2メートルの大腸や肛門に発生するがんです。できやすい部位は結腸、S状結腸、肛門へつながる直腸。成り立ちとしては大きく分けて、良性のポリープからがん化するものと、最初からがんであるものとの2系統があります。初期における自覚症状は、ほとんどありません。

原因は?

まだ原因ははっきりとわかっていません。ただし遺伝が関係するという説もあるので、家族に大腸がんを患った方がいる場合は気をつけたほうがよいでしょう。生活習慣との関係においては肥満、喫煙習慣、過剰なアルコール摂取がリスクを上昇させるとも言われています。

 

診断方法は?

CTコロノグラフィー

まずは便潜血反応検査、いわゆる検便を受けてください。これは大腸がん検診として、職場や自治体で公費の補助により行われているごく身近な検査です。初期の大腸がんでも、ほぼ9割はこの検査でチェックすることができます。異常が認められたら必ずすぐ、専門機関で精密検査を受けてください。検査の種類は大腸内視鏡検査が一般的ですが、当院では患者さんにとって痛みなど負担の少ないCTコロノグラフィー(※1)という画像診断も最近積極的に採用しています。このほか、腫瘍マーカーやCTを使ったPET検査も行っており、複数の検査を併用して、病変の把握の精度を高めるようにしています。


画像に写された大腸がん。

緑の部分ががん、右の写真の赤が動脈、青が静脈


がんが進行したら?

がんの進行状態を示す「ステージ」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、がんは0期からⅣ期に分けられます。がんが大腸の粘膜にとどまる0期、大腸壁の筋層にとどまるⅠ期、大腸壁の筋層を越えていてもリンパ節転移のないⅡ期、リンパ節に転移しているⅢ期、肝臓や肺などほかの臓器への転移があるⅣ期です。ステージによって治療方法が決まってきます。

治療方法は?

ダヴィンチXi

0期と、周囲組織への広がりが軽いⅠ期の場合、一般的には内視鏡治療後に経過観察へ移ります。

 

進行したⅠ期、さらにはⅡ期とⅢ期には手術による外科治療を行います。従来の開腹手術に加えて、腹腔鏡を使った手術もあります。当院では大腸がんの腹腔鏡手術は、昨年は手術全体の四分の一でしたが、今年は半数にまで増加しています。開腹手術に比べて体への負担を軽減でき、術後の痛みも少ないのがこの手術方法の特徴です。

 

さらに将来的には、手術用ロボット「ダヴィンチ」による手術も行う予定です(「クローズ・アップ」も参照してください)。この6月に消化器の手術に対応できる新機種を導入したばかりですが、大腸がんの手術にもロボットを使うことができれば、従来の手術よりも繊細かつ確実で、体への負担が少なくなると期待されます。

 

他臓器への転移が見られるⅣ期は、主に抗がん剤や放射線治療となります。抗がん剤については、ここ十年ほどで質がたいへん向上しています。とはいえ、当院では必要とあれば手術も行います。このステージまで進行していても手術が可能ながんは、大腸がんだけです。根治目的ではなく、出血や腸閉塞を防ぐための手術ではありますが、延命およびQOL(クオリティオブライフ=生活の質)の向上のためには不可欠な場合があります。

 

恵佑会札幌病院ならではの大腸がんへの取り組み

がんのできた位置によっては、人工肛門の造設が必要になる場合があります。人工肛門は決してネガティブなものではありません。高齢者や体の不自由な方には、むしろ手術後の生活の質を上げてくれるでしょう。当院にはストーマ(人工肛門)外来があり、予約制ですが、外来を月曜から金曜までの毎日開設しているのも恵佑会札幌病院ならではの取り組みです。みなさまからのご相談にできるだけ速やかに応じる体制ですので、ぜひ活用してください。


がんの専門病院として開院した恵佑会札幌病院では、がんの診断、手術、治療、経過観察、終末期医療まで、あらゆるステージに対応しています。大腸がんは、ほかのがんに比べて治る可能性が高いといえます。だからこそ治療後の長期的な経過観察が不可欠。退院後も必ず定期的に通院して、命を守る努力をしてください。当院のスタッフが全力でそのお手伝いをします。

 

 

久須美貴哉 くすみ たかや


1990年、北海道大学医学部卒業、恵佑会札幌病院外科勤務。2010年より同院副院長。日本外科学会専門医。日本がん治療認定医機構がん治療認定医。日本核医学会PET核医学認定医。