胃がん西田靖仙 恵佑会札幌病院副院長・手術部主任部長

西田靖仙 恵佑会札幌病院副院長・手術部主任部長

 

症状は?

胃がんは、早期の場合、痛みなどの自覚症状はありません。胃から出血したり、体重の減少といった症状が現れた時にはすでに進行しているケースがほとんどです。早期発見のためには、定期的に胃がんの検診を受けることが何よりも大切になります。実際、早期の胃がんは、人間ドックや、たまたま胃の内視鏡検査を受けて発見される場合が多いのです。


胃がんの中には、スキルス胃がんという種類のがんがあります。胃の粘膜の下にがんが広がっていくのが特徴です。男性よりも女性に多く、発症する年齢もほかの胃がんより低いのですが、このがんも自覚症状がありません。

 

原因は?

呼気によるピロリ菌の検査。吐く息(呼気)を採取して、ピロリ菌に感染しているかどうかを調べます。診断の精度が高く、しかも簡単に行える検査法です。

胃がんの原因は、塩分の多い食生活や喫煙といわれてきましたが、最近注目されているのがピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)という細菌です。この細菌が胃の中に住みつくと胃を傷つけて慢性胃炎を引き起こし、それが胃がんにつながっていくことがわかってきました。


ピロリ菌は食べ物や飲み物から感染しやすく、感染率は衛生環境と関係しています。日本では、1950年代以前に生まれた世代は、下水道があまり普及していなかったため、約8割の人々が感染していると言われています。その一方で、60年代以降は衛生状態がよくなったことから、若い世代の感染率は低くなっています。


ピロリ菌に感染しているかどうかは血液検査のほか、呼気で調べる方法もあります。検査でピロリ菌が見つかった場合、抗生物質など薬を服用してピロリ菌を退治する除菌療法が行われます。現在、この療法で健康保険が適用されるのは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、ピロリ菌が原因の胃炎の患者さん、そして早期胃がんで内視鏡治療を受けた患者さんに限られます。

 

ただ、ピロリ菌に感染していなくても、胃がんになる場合もありますので、感染していないからといって安心はせず、定期的に胃の内視鏡検査を受けることが大事です。

 

治療法は?

胃がんの腹腔鏡手術。

胃がんの治療については、がんが胃の粘膜内にとどまりリンパ節転移のない早期のがんであれば、内視鏡でがんを切除します。また、早期がんの場合、腹腔鏡を使ってがんを取り除く方法もあります。腹部に小さな穴を開けて内視鏡の一種の腹腔鏡を挿入し、テレビモニターの立体的な映像を見ながら、電気メスなどを用いて胃の一部を切除します。腹腔鏡手術は、開腹手術と比べて患者さんの体への負担を少なくすることができますが、高い技術が必要ですので、症例数の多い病院で受けることが重要です。


がんの広がりが大きく深く、リンパ節に転移している場合は開腹手術を行い、胃の3分の2以上と、周囲のリンパ節すべてを取り除きます。


また、当院では、がんの状態によって、手術のほか、抗がん剤や放射線治療など、いろいろな治療方法を組み合わせる集学的治療を積極的に行っています。集学的治療は、外科医、診断医、腫瘍内科医などの医師のほか、看護師や薬剤師などの専門スタッフとの協力が必要です。当院では集学的治療の体制を整え、胃がんに対する高度医療を展開しています。

 

恵佑会ならではの取り組みは?

当院では手術を受けた患者さん全員を対象に、手術後の生活状況など37項目のアンケートを行って、患者さんが困っていることなどを調査しています。手術後には胃切除後症候群という不快な症状が一定の頻度で起こりますので、それに対応していくためです。アンケートは当院の胃外科・術後障害研究会の「胃癌術後評価を考える」ワーキンググループが作成したものです。アンケートの回答をもとに、個々の患者さんの状況に合わせた治療で、術後のQOL(生活の質の向上)に努めています。


また、胃がんに対して集学的治療の体制が整っている医療機関は全国的に見て少ない状況にあるため、今年4月、当院では北海道大学、札幌医科大学、旭川医科大学の医師とともに、「北日本胃がん集学的治療研究会(略称・N-GAST)」を立ち上げ、協力体制を築いていくことになりました。

 

西田靖仙 にしだ  やすのり

 

1987年、旭川医科大学卒業、同大学病院などを経て、2002年より現職。専門は消化器の悪性腫瘍全般で、特に胃と胆のう・膵臓のがん。日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医、日本臨床腫瘍研究グループ施設責任者。