放射線治療科 最新の強度変調治療VMAT

最新の強度変調治療VMAT

エレクタ社製シナジー

当院では、強度変調(IMRT)を選択する目的を、(1)腫瘍のコントロールに必要な線量を想定して、従来法ではリスク臓器(OAR)を安全な条件下に置けずIMRTで安全性を担保できる場合、(2)より高い抗腫瘍効果を期待して、従来法では安全面から無理だろうと考えられていた高線量を適切な期間内に実現する、この2つに集約しています。この二つはいずれも、一定期間に、腫瘍域と転移予防域に強度の異なる治療(強い治療と優しい治療)を実現するというIMRT特有の原理を利用しているに過ぎません。

 

X線治療は正常組織と腫瘍の“回復”現象の差を利用できる人類史上素晴らしい発見ですが、従来、照射野の投与線量を決めることは“一組の回復に関する選択”をすることに過ぎませんでした。一方IMRTは、2~数段階の異なる線量投与法を一度に実現し、その生物学的利益を、腫瘍が画像上明らかな部分・顕微鏡で浸潤転移が明らかに成ると推定される部分・さらに顕微鏡でも分からない程度に低頻度で転移が予想される部位など、別々に選択指示(つまり回復現象の差を複数選択)でき、放射線毒性から各OARを守るための数個の制約条件も満たすという、現代コンピューターの恩恵を最大限生かした複雑な治療です。それだけに腫瘍制御、再発形式、各OARの制約条件などについて十分な知識や経験を積んでいなければ正しい治療はできません。当院では、海外の報告に留まらず、数多い手術後の病理結果や従来法の自験例との比較などを通じて研鑽を積み、2012年1月から「Elekta Synergy®」を導入して新しいタイプのIMRT ”VMAT“に力を入れて来ました。

 


恵佑会のがん医療について

 

治療部位2009年2010年2011年2012年2013年2014年2015年
前立腺

4

10 1010112141
頭頸部24118223052

頸部食道

10988
胸部食道
(心臓線量低減)
8610
2

5313
 合計616

21

335376114

 

 

上図は当院で行われたVMATの治療件数です。主に頭頚部がん・前立腺がん・頸部食道がんなどに対して実績を積んで来ました。

 

VMATとは、連続回転強度変調治療と訳され、回転原体照射の考え方に強度変調(IMRT)機能を加えた照射法です。リニアックのヘッド部分(ガントリー)を回転させながら、同時に遮蔽のためのマルチリーフコリメータ、バックアップコリメータをダイナミックに作動し、ガントリーの回転速度と線量率の変化によってIMRTを行うものです。従来の固定多門(ステップ&シュート法)によるIMRTに比べて、短時間(1回転あたり1分30秒から3分)でターゲットに限局した照射が可能となっています。この機能は、最近のリニアックには各メーカーが搭載しているにもかかわらず、国内での利用率はまだ1-2割と低いのが現状です。治療計画方法・検証方法およびその有用性と将来性が国際的に明確となりIMRTの主流となる方向性が見えて来たのが最近のことだからです。

 

よく患者の皆さんから聞かれるので補足しますと、話題の重粒子線治療は、腫瘍の回復現象をシャットアウトする非常に強力な治療ですが、正常組織の回復現象にも同様に作用するので、腫瘍浸潤がおよぶOARの種類によっては適応が狭くならざるを得ません。一方IMRTでは、従来の放射線生物学で分かっている知識や臨床の結果を積み上げて行くことで、あくまでも、腫瘍とOARとの“回復”の差を利用する治療を目指している訳です。 

 

では、当院の治療までの流れとVMAT施行典型例についてご紹介します。

 

治療決定から初回治療までの流れ

  • 固定具作成、治療計画用CT撮影

治療計画用CTは必要に応じて呼吸による体内の動きを捉えた4次元CTの撮影も可能です。



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  • 治療計画

CT画像を基本としてMRI/PETなどの画像を駆使した治療計画を、医師および医学物理士がコンピューターによる最適化を繰り返して完成させます。

 


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  • MOSAIQ(放射線治療マネジメントシステム)へ治療計画の転送


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  • IMRT (VMAT) 線量検証

IMRTは複雑な治療法であるため、治療開始前に専用線量計およびダイオード検出器で模擬ファントムに照射して治療計画時の計算値と誤差がないか確認する必要があります。

 


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  • セットアップ

治療台に寝ていただき、適切な位置にセットアップ。



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  • CBCT撮影/画像照合

セットアップ時の位置は治療装置に備え付けられているCBCT装置で正確に再現されます。CBCTでは必要に応じ、呼吸性移動を4次元(Symmetry)で観察可能です。 CBCT画像と元の計画CT画像を照合し、位置の誤差を算出。次に6軸ベッド(HexaPOD)装置にて正確な位置補正を行い、できるだけ計画CTの状態に近づけてからVMAT開始となります。

 


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  • VMAT治療開始

 

約2~5分で治療は終了し、痛みや違和感を感じることはありません。


 

症例

  • 前立腺がん症例[cT3N0、Gleason 4+3] 62歳 男性

D95 (標的となる領域PTVの95%をカバーする)指示で74Gy/37回/7.5週。

高リスク群以上の症例ではPTVの範囲が広くなりますが、直腸・膀胱の線量制約(膀胱の37.5Gy以上照射される範囲V37.5<40% および直腸のV37.5Gy<50%, 直腸のV60Gy<20%, 直腸のV70Gy<5%)を確実に守ることで安全を確保しています。

 

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  • 前立腺がん術後の腫瘍床[PSA再発例]照射例 69歳 男性

D95 (標的となる領域PTVの95%をカバーする)指示で66Gy/33回/6.5週

前立腺が無い状態でのPTVには膀胱後壁や直腸が含まれ易くなりますが、【1】の症例と同様の線量制約を守るようにして、臨床的に意味がある線量を投与しています。


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  • 上咽頭がん化学放射線施行症例[cT3 N1M0] 28歳 男性

頭蓋底の一部に浸潤した腫瘍部位にD95指示で72Gy/34F/48daysで指示。

その他、69Gy/34F・60Gy/34Fの三段階の指示線量を設定して計画。

 

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  • 頚部食道がん症例[cT3N0M0] 67歳 男性

腫瘍部位にD95指示で68Gy/34F/51daysで指示。

その他、60Gy/34F・56Gy/34Fの三段階の指示線量を設定して計画。

 

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  • 胸部食道癌がん症例[cT4N1M0] 63歳 男性

50.4Gy/28F後計画救済手術例
点線は三次元原体照射のみで行った場合で、実線はVMATで心臓保護した場合です。

後者で心嚢のV40が約2割改善されたことになります。手術後の心嚢液貯留を予防するための照射法です。

 

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