vol.18 肝がん

松本岳士 恵佑会第2病院副院長・札幌病院兼務

  

がんの部位別死亡率では男性で第4位、女性で第6位

肝がんは予後があまり良くない病気で、2013年の日本の部位別がんの死亡率では第5位に位置しています。男女別に見ると、男性では肺がん、胃がん、大腸がんについで第4位、女性では大腸がん、肺がん、胃がん、膵がん、乳がんについで第6位です。死亡率では、男女とも減少傾向にはありますが、死亡実数は依然として毎年3万人を超えており、重要な病気の一つといえます。

 

背景にはB型やC型肝炎ウイルスの感染、過度なアルコール摂取

日本における肝がんの多くは、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染、過度なアルコール摂取による慢性肝炎、肝硬変を背景としています。中でもC型慢性肝炎、肝硬変から発症する肝がんは、1991年には肝がんの約70パーセントを占めていましたが、その後、徐々に減少しています。その一方で、非ウイルス性(非B非C型)の慢性疾患を背景とした肝がんは増加しています。メタボリック症候群や肥満でみられる非アルコール性の肝疾患の増加もその一因と考えられています。


肝臓は体の中で最も大きな臓器で、成人で800〜1200gあります。そのはたらきは、食べ物の栄養分を蓄えて、必要に応じてエネルギーとして供給したり、アルコールなどの体にとって有害な物質を解毒、分解することです。また、胆汁という消化液もつくっています。肝臓の病気になるとこうした機能が損なわれてしまうのです。

 

リスク要因のある場合は年に1回以上の画像検査を

肝細胞がんのCT画像

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれていて、肝がんの初期に自覚症状が出ることはまずありません。食欲不振、体のだるさ、微熱、おなかの張り、体重減少、黄疸などが出ることもありますが、そのような症状が出たときには、残念ながら手遅れという場合がほとんどです。

 

肝がんに必要な対策は何よりも早期発見です。B型またはC型肝炎の方、アルコール性肝炎の方はリスクが高いので、年に1回以上は定期的な画像検査(CTやMRI)が必須です。そうでない方も健康診断や人間ドックといった一般的な検診を定期的に受けていただきたいと思います。そこで異常が認められたら専門医の画像検査を必ず受けてください。肝がんにおける画像検査はきわめて重要です。当院でも一般の検診や人間ドックで異常が認められた方が精密検査にこられて、肝がんを発見できる例が多いのです。

 

主な治療は肝臓の切除に加えて内科的な治療法も

肝がんの治療方法は、がんの進行度合いと、患者さんの肝臓の元気さ(肝予備能)によって異なります。主に、外科的な治療である肝臓の切除(肝切除)、内科的な治療として肝動脈塞栓(そくせん)術、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法の3本立てです。肝切除は治癒が期待できる治療法ですが、患者さんの肝機能の程度により、制限される場合があります。肝動脈塞栓術は足の付け根からカテーテルを入れて、がんに栄養を運ぶ血管をふさぐ物質を注入し、がんを兵糧攻めにします。近年ではカテーテルから抗がん剤を投与した後に、血管をふさぐ物質を注入する方法も行われています。ラジオ波焼灼療法はおなかに電極針を挿入し、がん細胞を焼く治療法です。恵佑会では外科的治療は札幌病院、内科的治療は第2病院で行っています。


以上の治療法の効果が期待できない場合、生存期間の延長を図るために化学療法や放射線療法も行われます。

また外科的治療には肝移植もあります。がんの発生母地である肝臓そのものを取り除くという意味で、理論的には最も治癒の高い治療法ですが、実施率はきわめて少ないのが実情です。

 

ラジオ波焼灼療法(RFA)

ラジオ波焼灼療法(RFA)

ラジオ波焼灼療法に用いられる針。この針を体の外からがんに刺して、針の先端に電気を通してがんを焼いて死滅させる方法です。体への負担が少ない内科的な治療法です。

肝動脈塞栓術(TAE)

肝動脈塞栓術(TAE)


カテーテルを血管に入れて、がんに栄養を運ぶ血管をふさぎ、がんを兵糧攻めにする方法です。

 

①血管造影検査での肝細胞がん。
②がんの近傍より抗がん剤を注入しているところ。

予防のためには日常生活でお酒の量を控えること

繰り返しになりますが、肝がんはB型肝炎、C型肝炎、アルコール性肝炎の方に非常に多い病気です。つまり以上のいずれかに当てはまる方は、年に1回以上は専門医のもとで画像検査を受けてください。自分は当てはまらないという方も、一度は肝炎ウイルス検査を受けることをおすすめします。肝がんにならないため日常生活で心がけるべきことは、お酒の量を控えるの一点に尽きます。

 

松本岳士 まつもと  たけし


札幌医科大学医学部卒業。市立室蘭総合病院消化器内科、道立紋別病院消化器内科、札幌厚生病院消化器内科、NTT札幌病院消化器内科を経て、2004年より恵佑会札幌病院勤務。13年より恵佑会第2病院内科主任部長。日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器病学会指導医・専門医、日本内科学会認定内科医。