vol.22 口腔がん

山下徹郎 恵佑会札幌病院顧問

 

髙後友之 恵佑会札幌病院歯科口腔外科医師

 

特徴は?

口腔とは、顔の下1/3を占める部分のことで、消化管の最上部に位置し、食物の咀嚼や嚥下を行う他に、呼吸、構音、味覚、唾液分泌の機能も有しています。


口腔を構成するものは、歯、顎骨とそれらを覆う粘膜があり、口唇、頬粘膜、歯肉、舌、口底、口蓋があります(図1)。これらにできる悪性腫瘍の総称が口腔がんです。その中でも日本人に最も発生しやすいのは舌がんです。

 

口腔がんは近年、増加傾向にあり、社会の高齢化に伴って高齢の患者さんが増えています。この傾向は、恵佑会札幌病院でも明らかです(グラフ1)。


口腔がんの初期には、痛みや出血がないのが特徴で、白い病変(白板症)あるいは赤い病変(紅板症)が見られ、硬いシコリができることもあります。


さらにがんが大きくなると、話しづらい、食べにくいといった症状のほか、出血や悪臭を伴うようになります。

 


原因は?

アルコールやタバコ、熱い食べ物、刺激のある食べ物は口腔がんの発生リスクが高いことが知られています。


合わない義歯などにより、常に粘膜が傷つけられている状態が原因のこともあります。食べ物を咀嚼していて、いつも口の中の同じ部位を誤って噛んでしまうという方も注意が必要です。


また、口腔がんの発生は、口の中の衛生状態とも大いに関係しています。義歯の調整はもとより、虫歯の自覚症状がなくても定期的に歯科検診を受けることが大切です。かかりつけの歯科医をもち、口腔ケアに心がけることは、口腔がんの予防と早期発見にもつながります。

 

検査は?

検査は、見ること(視診)と触ること(触診)をまず行います。あごの下や首のリンパ節にも転移しやすいため、それらも視診・触診し、リンパ節の腫れ具合なども確認します。がんが疑われる場合には、細胞を採取して顕微鏡で調べる細胞診や、組織を採取する生検を行います。生検によりがんの診断が確定すると、画像検査(CT、MRI、超音波、PETなど)によって、がんの進行度や転移を調べます。口腔がんは、のど、食道、胃などのがんが重複して発症していることがありますので、上部消化管の内視鏡検査も行います。


治療法は?

治療は、手術による切除、放射線治療、抗がん剤治療があります。がんの部位・大きさ・病理組織診断・転移・患者さんの全身状態により、それぞれの治療法を単独あるいは併用して行います。切除範囲が大きい場合は、体の他の部分から皮膚・筋肉・骨などを移植する再建外科手術によって、欠損部の修復を行います。


近年は分子標的薬を含めた化学療法も積極的に行っています。分子標的薬とは、がん細胞のもつ性質を分子レベルでとらえて効率よく作用するように作られた薬です。副作用を抑えながら治療効果を高めると期待されています。


恵佑会ならではの取り組みは?

恵佑会は、口腔がんの診断から終末期まで一貫した集学的治療を行っている、道内でも数少ない施設の一つです。集学的治療とは、手術治療、放射線治療、薬物療法などを、がんの種類や進行度に応じて組み合わせて行う治療です。各分野の専門スタッフが連携して治療や緩和ケアにあたり、患者さんのQOL(生活の質)をできるだけ下げないよう力を尽くしています。


特に高齢の患者さんの場合、全身状態や周辺環境(サポートしてくれる同居家族の有無など)も考慮して、医療ソーシャルワーカーとも協力しながら、各個人に適した治療法を選択するとともに、心身のケアを行っています。

 

がんは早期発見・早期治療が大切ですが、恵佑会もこれに積極的に取り組んでいます。前がん状態(扁平苔癬など)の場合は、定期的な診察、細胞診、必要に応じて切除、レーザー治療などを行い、厳重な経過観察を継続しています。さらに進んだがん化率の高い前がん病変(白板症・紅板症)がみとめられた場合は、早期の切除をすすめています。

山下徹郎 やました てつろう

 

1973年、北海道大学歯学部卒業。歯学博士。同大学口腔外科・東日本学園大学(現・北海道医療大学)勤務を経て、1988年より恵佑会札幌病院勤務。2013年より恵佑会札幌病院顧問。

日本口腔外科専門医・指導医。

髙後友之 こうご ともゆき

 

2002年、北海道医療大学卒業。09年、名古屋大学大学院医学研究科・医学部医学科修了、博士号取得。名古屋市立大学病院に助教として3年間勤務。12年より恵佑会札幌病院勤務。緩和ケア研修会修了。専門は口腔外科全般、口腔がん。日本口腔外科学会、日本口腔腫瘍学会所属。