消化器外科
食道がんとは

2001年の日本の食道がん罹患数(食道がんになった人)は男性13,840人、女性2,483人、合計16,323人です(がんの統計‘07財団法人がん研究振興財団による)。
北海道は日本の人口の5%と計算すると、食道がんは毎年816人発生します。2007年恵佑会札幌病院に入院した食道がん患者さんは336人ですので、北海道の40%以上の食道がん患者さんが入院治療したことになります。
日本では1年間に食道がんでおよそ1万人が亡くなっています。
食道がんはがんの中でも治療困難ながんの一つですが、最近では診断や治療法が進歩して、治る例が以前より増えています。
原因については詳しくわかっておりませんが、喫煙、アルコール多飲などががん発生に影響しているようです。
50歳以上の男性に多く、特に喫煙、飲酒歴の長い人は1年に1回の内視鏡検査をお勧めします。




診 断

症状はつかえ感が一番多い訴えですが、早期のがんでは症状がないことが多いです。
診断方法には、内視鏡やバリウムによる検査があります。
早期がんの発見には入念な内視鏡検査を行いますが、その時はヨードを塗布(かける)することが必要です。
ヨードを塗布しますとしみて辛いのですが、早期のがんを見逃さないためには重要です。バリウム検査は、病巣の広がりや深さなど全体像の診断に必要です。
内視鏡的超音波検査(EUS)は、がんの深達度やリンパ節転移の有無などの診断に重要です。



恵佑会札幌病院の治療方針

当院を訪れた食道がん患者さんの代表的な治療の流れを示します。
勿論御本人や家族の希望も十分に考慮しながら治療をいたします。
沢山の情報がありますが、それぞれの治療法には利点、欠点がありますので、説明をうけ、理解することが必要です。
上記チャート、もしくはこちらをクリックすると画像が大きく見られます。
治療法

療法には1)切除、2)放射線治療、3)化学療法(抗がん剤)、4)放射線化学療法がありますが、
これらを組み合わせることもあります。

1) 切除


一般的には外科切除を意味します。
食道がんは頸部、胸部、腹部のリンパ節へ広範囲に転移することが多く、この3つの領域の徹底的リンパ郭清を伴う食道切除再建が標準術式です。
頸部、右胸部、腹部の三か所の傷がつきます。食道が無くなりますので胃を頸部まで持ち上げ、食道の代わりにします。
手術時間は4〜5時間、平均4時間30分、出血量は400ml前後です。

胸腔鏡を使って胸部の操作をおこなう鏡視下手術が注目されています。
胸の傷は2〜3cmのものが4〜5ヶ所だけで、大変すばらしい術式ですが、食道がんはリンパ節転移が多く、しかも広範囲に転移します。
十分なリンパ郭清を行っている、経験豊富な施設でご相談ください。

内視鏡的に切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)あるいは内視鏡的粘膜下剥離術(ESD)があります。
どの症例にも出来るのではなく、リンパ節転移のない粘膜がん(表面の浅い部分のがん)が治療可能です。従って術前の検査が極めて重要です。

最近色々な治療が行われておりますが、手術前の診断は全面的に信頼出来る訳ではありません。深達度(がんが食道壁のどこまで浸潤しているか)は80〜90%、リンパ節転移は60〜70%の正診率(診断が正しかった率)ですので、治療法を決定するにはこの事も参考にする必要があります。


2) 放射線治療

外科手術と同様、食道がん治療の主たる治療法です。根治治療ではおよそ6週間かかります。決定するにはこの事も参考にする必要があります。


3) 化学療法

食道がんでは現在のところ、根治的治療として抗がん剤単独の治療はありません。
血行転移(肺、肝臓などの転移)がある例や、再発例におこなわれます。
一般的には手術や放射線照射と併用されます。



4) 放射線化学療法

最近注目されている治療法です。以前からあった治療法なのですが、放射線照射範囲が広い、放射線照射と抗がん剤投与を同時に行う、放射線線量も抗がん剤の用量も多いなど従来の治療法とは異なる治療法です。治療法としては決して体に優しい治療法ではありませんが、食道や胃の機能がのこり、手術の傷がないなど利点があります。
まだ限られた施設でしかできない治療法と考えられます。




重複がんのこと

がん患者さんが他の臓器のがんになることがありますが、これを重複がんといいます。
食道がんは重複がんの多いがんとして知られています。食道がんの患者さんは食道以外の臓器にがんが出来やすく、またほかのがんになった人が食道がんになりやすいことが分かっています。
恵佑会札幌病院では食道がん患者さんのおよそ20%は重複がんです。
その臓器としては、舌、口腔、咽頭、喉頭、肺が代表的です。
勿論日本人に多い、胃や大腸のがんとも重複することも多いです。



恵佑会札幌病院の治療内容

1981年開院以来2007年12月迄に入院された全食道がん患者さんは3732人です。治療法は時代と共に変化しますので1995年1月より2007年12月迄の2640人の治療法をみました。
治療のうち1番多かった治療法は切除62.7%(1657人)でした。
外科的切除は47.7%(1259人)、内視鏡的切除15.1%(398人)でした。
外科的切除の中には4.2%(111人)の鏡視下補助手術が含まれています。
切除以外の治療(非切除)は、37.2%(983人)です。この方達への治療は、放射線単独治療7.7%(202人)、放射線化学療法17.7%(388人)、化学療法単独1.7%(45人)でした。残りの方達にも症状緩和の何らかの治療がされています。
食道癌症例数と治療法
上記チャート、もしくはこちらをクリックすると画像が大きく見られます。
成績

治療後5年以上生存する割合を『5年生存率』で表わしますが、食道がん切除後の全患者さんの5年粗生存率は63.2%(食道がん切除治療を受けた全員の生存率、がん以外で亡くなった人も含む)、そして5年原病生存率は70.8%(食道がんのみの原因で亡くなった人)でした。勿論がんの進行度(進み具合)により成績が大きく違います。
他の治療法の成績もありますが、患者さんの背景(進行度)が異なっていますので省きます。




おわりに

食道がんはまだまだ診断や治療の面で変化していくと思われます。
恵佑会札幌病院では現時点での情報を説明しながら、豊富な経験に基づいた診断と治療を行っています。
消化器外科の概要
食道がんの治療方針と治療成績
胃がんの治療方針と治療成績
GISTの治療方針
大腸直腸がん治療方針と治療成績(工事中)